2007年 12月 07日
Tristan und Isolde
|
Date: 2007-12-07
Hall: Delphi Filmpalast (live broadcast from Teatro alla Scala)
Opera Info: Teatro alla Scala
Rating: ★★★★
ミラノのスカラ座(Teatro alla Scala)の2007/2008年度シーズンオープニング作品。スカラ座からのライブ中継をベルリンの Delphi Filmpalast という映画館で観るイベントに招待されて行って来ました。僕がセット販売のチケットを買ったベルリンのシュターツオパーと、今回のオペラをテレビ放映した Arte というテレビ局が、セット販売チケットを買った人に招待状を送ってくれたようです。(ちなみにこの Delphi Filmpalast という映画館は、ベルリン映画祭の会場の一つでもあり、僕のお気に入り。)
映像ではスカラ座の中も映されましたが、これはホントに見事でした。是非いつの日か行ってみたいものです。…とはいっても、自分には今回のようなオペラ…一流のオペラ座で、一流の指揮者、舞台監督、歌手たちがそろった、超一流のオペラ…のチケットを手に入れることなんてほとんど不可能であろうから、今回映画館ででもこのオペラを観れたのは本当にラッキーだったと思ってます。ラッキーだったと思わせるだけの迫力は十分にありました。
今回は僕にとってワーグナー・デビューでした。ワーグナーは、8月に行って来たノイシュヴァンシュタイン城を作った王様、ルートヴィッヒ2世のお気に入りの作曲家でした。そんなワケで、ノイシュヴァンシュタイン城の壁にはワーグナーのオペラのシーンをモチーフにした絵がふんだんに使われていました。それを観た後だったので、どうしてもワーグナー作品を観てみたかったということもあり、本当はメチャクチャ忙しいんですが、思い切って行ってみることにしました。
それにしても、噂に違わずハンパじゃなく長かった。6時開場7時開演だったので、6時過ぎには映画館に入り、オペラが終わって映画館を後にしたのが夜中の12時過ぎでしたから、昨日は1日の4分の1を映画館で過ごしたことになります。う〜ん、そう考えるとすごいな。最近忙しくて連日4、5時間くらいしか寝ていなかったので、最後まで観れるか自信なかったんですが、2幕目の前半はちょっとかったるくておそらく少し居眠りしてたと思うものの、結局最後まで楽しんできました。
指揮者はシュターツオパーの(多分)音楽総監督をしているダニエル・バーレンボイム。詳しいことは知らないけど、ワーグナー作品のスペシャリストらしいです。指揮者の腕前を評価できる程耳が肥えているわけじゃないので彼の批評をすることはできませんが、彼の指揮でワーグナー・デビューできたのは、ラッキーだったんじゃないかと思います。
そして歌手たちはどの人もすごかった。名前は僕が無知なので全然分からないんですが、どの人をとっても迫力のある歌声でした。僕は普段はCDでオペラを聴いています。…で、CDになる録音というのは大抵一流の歌手が歌っているわけですから、CDを毎日聴いているということは、当然のことながら一流の歌を毎日聴いていることになります。そこに来て、超一流とまでは行かないオペラを生で聴くと、やっぱり中には「CDで聴いてる歌手の方がうまいかなぁ」と、心の中でちょっぴり思ってしまうようなことがあるワケです。今回に限っては、そう感じたことは一度としてありませんでした。
それにしても、ワーグナーの作品って、他のオペラと全く雰囲気が違いますね。気がついたことをいくつか挙げてみると、
・アリアなどの歌と歌の間がない。
オーケストラは一幕の間、ずっと演奏しっ放し。お客さんも歌と歌の間に拍手をすることはありません(というか、できません)。
・独唱が多い。
モーツアルトは非常に合唱が多いのに対して、ワーグナーは独唱がとても多いと感じました。“トリスタン…”で合唱らしい合唱があったのって、2幕の最初のトリスタンとイゾルデが一緒に歌うシーンくらいなんじゃないでしょうか。ひたすら一人一人が気合いを入れて歌ってる感じです。
・最初から最後まで全力投球
なんか、イメージ的には最初から最後までクライマックスのような勢いで歌と演奏が続きます。圧倒される勢いはあるんだけど、悪い言い方をするとワンパターンという印象を受けました。野球に例えると160キロの直球だけでガンガン押してくるピッチャーみたいな感じです。それで4時間以上のオペラを演じるんだから、指揮者、オーケストラ、そして歌手たちの負担は相当なものと思いますし、それと同様に観る方への負担もかなりのものがあります。それはそれですごくいいと思うし、今回もすごく楽しんできましたが、もし僕が最初にワーグナーを聴いていたら、多分、僕は今のようなオペラファンにはなっていなかったんじゃないかと思います。モーツアルトのような緩急のあるオペラの方が気楽に楽しんで観れますね。
映画で例えると、コッポラ、ベルトルッチ、スコセッシのような、1シーン1シーンへの作り込みがみしみしと伝わってくるような、3時間を超える超大作を作る監督がワーグナー、これに対して、ストーリーがすいすいと進んで行って盛り上がりがはっきりしている娯楽映画を作る監督がモーツアルトって感じでしょうかね。
ワーグナーは全体として圧倒される迫力を持っていますが、この曲がいい!みたいに個々の歌で印象に残るメロディーと言うものがあまりない感じがします。それでもあの大規模なオーケストラを使って、あれだけの歌を歌いきれる歌手を集めて作る作品ですから、それが一緒になった時の迫力は比類ないものだと思います。
今シーズンチケットが買ってあるワーグナー作品は“タンホイザー”です。それまでに、もう少し他の作品も聴いてみます。実は、今回がワーグナー・デビューとはいったものの、少し前に“ニーベルングの指環”を買って聴き始めています。4つのオペラのセット、CD14枚組!なので、まだしばらくの間はこれを聴くことになるでしょう。
Hall: Delphi Filmpalast (live broadcast from Teatro alla Scala)
Opera Info: Teatro alla Scala
Rating: ★★★★
ミラノのスカラ座(Teatro alla Scala)の2007/2008年度シーズンオープニング作品。スカラ座からのライブ中継をベルリンの Delphi Filmpalast という映画館で観るイベントに招待されて行って来ました。僕がセット販売のチケットを買ったベルリンのシュターツオパーと、今回のオペラをテレビ放映した Arte というテレビ局が、セット販売チケットを買った人に招待状を送ってくれたようです。(ちなみにこの Delphi Filmpalast という映画館は、ベルリン映画祭の会場の一つでもあり、僕のお気に入り。)
映像ではスカラ座の中も映されましたが、これはホントに見事でした。是非いつの日か行ってみたいものです。…とはいっても、自分には今回のようなオペラ…一流のオペラ座で、一流の指揮者、舞台監督、歌手たちがそろった、超一流のオペラ…のチケットを手に入れることなんてほとんど不可能であろうから、今回映画館ででもこのオペラを観れたのは本当にラッキーだったと思ってます。ラッキーだったと思わせるだけの迫力は十分にありました。
今回は僕にとってワーグナー・デビューでした。ワーグナーは、8月に行って来たノイシュヴァンシュタイン城を作った王様、ルートヴィッヒ2世のお気に入りの作曲家でした。そんなワケで、ノイシュヴァンシュタイン城の壁にはワーグナーのオペラのシーンをモチーフにした絵がふんだんに使われていました。それを観た後だったので、どうしてもワーグナー作品を観てみたかったということもあり、本当はメチャクチャ忙しいんですが、思い切って行ってみることにしました。
それにしても、噂に違わずハンパじゃなく長かった。6時開場7時開演だったので、6時過ぎには映画館に入り、オペラが終わって映画館を後にしたのが夜中の12時過ぎでしたから、昨日は1日の4分の1を映画館で過ごしたことになります。う〜ん、そう考えるとすごいな。最近忙しくて連日4、5時間くらいしか寝ていなかったので、最後まで観れるか自信なかったんですが、2幕目の前半はちょっとかったるくておそらく少し居眠りしてたと思うものの、結局最後まで楽しんできました。
指揮者はシュターツオパーの(多分)音楽総監督をしているダニエル・バーレンボイム。詳しいことは知らないけど、ワーグナー作品のスペシャリストらしいです。指揮者の腕前を評価できる程耳が肥えているわけじゃないので彼の批評をすることはできませんが、彼の指揮でワーグナー・デビューできたのは、ラッキーだったんじゃないかと思います。
そして歌手たちはどの人もすごかった。名前は僕が無知なので全然分からないんですが、どの人をとっても迫力のある歌声でした。僕は普段はCDでオペラを聴いています。…で、CDになる録音というのは大抵一流の歌手が歌っているわけですから、CDを毎日聴いているということは、当然のことながら一流の歌を毎日聴いていることになります。そこに来て、超一流とまでは行かないオペラを生で聴くと、やっぱり中には「CDで聴いてる歌手の方がうまいかなぁ」と、心の中でちょっぴり思ってしまうようなことがあるワケです。今回に限っては、そう感じたことは一度としてありませんでした。
それにしても、ワーグナーの作品って、他のオペラと全く雰囲気が違いますね。気がついたことをいくつか挙げてみると、
・アリアなどの歌と歌の間がない。
オーケストラは一幕の間、ずっと演奏しっ放し。お客さんも歌と歌の間に拍手をすることはありません(というか、できません)。
・独唱が多い。
モーツアルトは非常に合唱が多いのに対して、ワーグナーは独唱がとても多いと感じました。“トリスタン…”で合唱らしい合唱があったのって、2幕の最初のトリスタンとイゾルデが一緒に歌うシーンくらいなんじゃないでしょうか。ひたすら一人一人が気合いを入れて歌ってる感じです。
・最初から最後まで全力投球
なんか、イメージ的には最初から最後までクライマックスのような勢いで歌と演奏が続きます。圧倒される勢いはあるんだけど、悪い言い方をするとワンパターンという印象を受けました。野球に例えると160キロの直球だけでガンガン押してくるピッチャーみたいな感じです。それで4時間以上のオペラを演じるんだから、指揮者、オーケストラ、そして歌手たちの負担は相当なものと思いますし、それと同様に観る方への負担もかなりのものがあります。それはそれですごくいいと思うし、今回もすごく楽しんできましたが、もし僕が最初にワーグナーを聴いていたら、多分、僕は今のようなオペラファンにはなっていなかったんじゃないかと思います。モーツアルトのような緩急のあるオペラの方が気楽に楽しんで観れますね。
映画で例えると、コッポラ、ベルトルッチ、スコセッシのような、1シーン1シーンへの作り込みがみしみしと伝わってくるような、3時間を超える超大作を作る監督がワーグナー、これに対して、ストーリーがすいすいと進んで行って盛り上がりがはっきりしている娯楽映画を作る監督がモーツアルトって感じでしょうかね。
ワーグナーは全体として圧倒される迫力を持っていますが、この曲がいい!みたいに個々の歌で印象に残るメロディーと言うものがあまりない感じがします。それでもあの大規模なオーケストラを使って、あれだけの歌を歌いきれる歌手を集めて作る作品ですから、それが一緒になった時の迫力は比類ないものだと思います。
今シーズンチケットが買ってあるワーグナー作品は“タンホイザー”です。それまでに、もう少し他の作品も聴いてみます。実は、今回がワーグナー・デビューとはいったものの、少し前に“ニーベルングの指環”を買って聴き始めています。4つのオペラのセット、CD14枚組!なので、まだしばらくの間はこれを聴くことになるでしょう。
by s_i33
| 2007-12-07 19:00
| オペラ・バレエ